公認会計士・税理士・損害保険仲立人の長谷川賢哉です。島では「けんちゃん」と呼ばれています。

10月1日、竹富町役場の1階に売店ができました。名前は「START」といいます。

運営しているのは合同会社ヒーヤイという会社で、僕はそこの業務執行社員です。担当は経理と総務。

そして先週から、レジにも立っています。

この仕事は、僕には1円にもなりません

先に書いておきます。

僕はこの売店で売る商品を持っていません。サービスも提供していません。つまり、この案件から直接入ってくる収入はありません。

それなのに、この3ヶ月は本業以上の時間を使いました。

なぜそんなことをしたのか。その話を書きます。

許認可を、全部自分で調べました

売店をひとつ開けるのに、必要な手続きがこれだけありました。

法人の設立。飲食店の営業許可。酒類の販売。たばこの販売。切手や収入印紙の取り扱い。

どれも、僕がこれまでの仕事で扱ったことのないものばかりです。顧問先から、こういった許認可の相談を受けたこともありません。

全部、調べながらやりました。

会計士や税理士は、書類を作ることには慣れています。ただ、許認可はまったく別の世界でした。どこに出すのか、何が要るのか、いつまでにやるのか。調べないと一つも分かりません。

換気扇がないので、温かいものが出せなくなりました

やってみて分かったこともあります。

飲食店の営業許可の関係で、換気扇がないと簡単な調理ができません。軽食を出す予定でしたが、これができなくなりました。

切手と収入印紙も、当初は扱うつもりでした。こちらも販売できないことになりました。

どちらも、最初の計画には入っていたものです。調べていく過程で、できないと分かりました。

やってみないと分からないことが、まだこれだけあるんだなと思いました。

1枚の紙に、10人の印鑑をもらう

一番大変だったのは、書類そのものではありませんでした。

運営しているのは10人です。住んでいるのは黒島、小浜島、西表島、波照間島、そして石垣島。全員が同じ島にいません。

会社の設立登記では、社員全員の押印が必要な書類があります。1枚の紙を船で島から島へ回して、10人分の印鑑を集める。どう考えても大変です。

なので、通常とは違う形で設立登記の申請書類を作りました。

役員会議の日程が、そもそも合いません

これは設立後もずっと続いています。

役員が10名いると、全員が参加できるタイミングを見つけるのが難しい。船の時間があり、それぞれの本業があり、島によって事情も違います。

それでも、集まることを諦めてはいません。

決め方のルールを先に作って、集まらなくても進む形にしています。それでも、決まらないまま止まることはあります。

離島に限らず、共同経営は難しいと言われます。ただ、僕たちの場合はその前に、物理的に集まれないという壁がありました。

それでもやっているのは、実証したいからです

僕がやりたいのは、沖縄の所得水準を上げることです。これは連載で何度か書いてきました。

この売店は、その一つの形です。

誰かに言われたからやるのでもなく、これまでと同じことを繰り返すのでもない。知恵を出し合って、挑戦して、たとえ失敗しても協力して軌道修正すれば、うまくいく。それを実証したいと思っています。

うまくいくと決まっているわけではありません。まだ開いたばかりです。

オープンから2日間、僕はほぼレジ係でした

10月1日と2日は、ほとんどレジに立っていました。

2日の夜は、BARタイムの営業を試験的にやってみました。たくさんの方にご来店いただきました。

会計士として顧問先に助言する立場と、自分でレジを打つ立場は、まったく違いました。商品がどう届いて、どう並んで、どう売れて、どう記録されるのか。いつも数字で見ていたものを、体で通しています。

これは本業にも返ってくると思っています。

これは「僕の場合」です

僕は本業が回っている状態で、この案件に時間を使いました。本業が苦しい時期だったら、たぶんできませんでした。

1円にもならない仕事に本業以上の時間を使うことを、人に勧めるつもりはありません。

ただ、独立や移住を考えている士業の方には、こういうやり方もあると知っておいてもらいたいと思いました。顧問として外から助言するのではなく、当事者として中に入る。許認可も、登記も、レジも、自分でやってみる。

渡せるのは、実際にやってみた3ヶ月の中身だけです。