公認会計士・税理士・損害保険仲立人の長谷川賢哉です。島では「けんちゃん」と呼ばれています。

僕には、会計士の仕事とはまったく別に、勝手に名乗って続けている肩書きがあります。「八重山スーパーアテンダー」です。来島された方を、島じゅう案内して回る。もちろん無償で、誰に頼まれたわけでもなく。今日は、なぜ会計士がそんなことをしているのか、という話です。

始まりは、名古屋の「お酒が飲める会計事務所」

もとをたどると、名古屋にいた頃にさかのぼります。当時、僕は事務所にワインセラーを置いて、「お酒が飲める会計事務所」というのをやっていました。事務所で飲み会を始めてみたら、3か月で120名もの方が来てくださった。堅いイメージの会計事務所に、人が集まって飲む場所を作る。この時点で、だいぶ変わった会計士だったと思います。

石垣島に移住するとき、その延長で「僕をダシに、経費で石垣島に来る人が少しは出てくるだろうな」とは予想していました。仕事の打ち合わせついでに、南の島へ。悪くない口実です。ただ、まさか2年で200名もの方が来島されるとは、さすがに思っていませんでした。

空港のお出迎えから、海も、離島めぐりまで

具体的に何をするのか。その日の仕事の状況にもよりますが、フルコースだとこうです。

まず空港でお出迎え。そこから石垣島内の観光スポットをご案内します。海が好きな方には、シュノーケルツアーを予約して一緒に海へ潜る。僕はマリンジェットも持っているので、免許をお持ちの方とは、一緒に海をツーリングすることもあります。夜はお店を予約して一緒に飲む。翌日は、竹富島や黒島、波照間島といった離島までアテンドすることもあります。要するに、来られた方が「石垣島を満喫した」と言って帰れるように、一通り面倒を見る。旅行会社でもないのに、我ながらよくやっているなと思います。

頻度は不定期です。相手は、お客様や仕事で繋がった経営者の方が多い。最近は「知り合いが石垣に行くから、アテンドしてあげて」という依頼も増えてきて、島で初めましての方をご案内することも多くなりました。

無償です。でも、ただの旅行ではなくなってきた

これ、全部無償でやっています。お金はいただきません。

最初は、正直そんなに深い意味はありませんでした。「せっかく石垣島まで来てくれたんだから、たくさん楽しんでほしい」。その程度の感覚です。

でも、続けているうちに、面白いことが起きるようになりました。アテンドの中で、八重山の自然を前にして、日々の喧騒の中で忘れていた「本当に自分がやりたいこと」に気づいて、内地へ帰っていく方が現れ始めたんです。海を見ながら、ふと本音がこぼれる。都会では話さなかったような、これからやりたいことを語り出す。

それを何度か目にするうちに、僕の中でアテンドの意味が変わりました。今は、日本を支える中小企業の経営者の、その心を燃やすきっかけになれれば——そう思ってやっています。大げさに聞こえるかもしれませんが、これは本気です。

3時間、ずっと一緒にいる。そこで信頼が生まれる

このアテンドが、結果的に仕事に繋がることもあります。

石垣島は、実はかなり広い。南の市街地から最北端まで、車で片道1時間かかります。往復して、あちこちの観光地を回っていれば、少なくとも3時間は、車の中でずっと一緒です。その間は、当然ずっと会話になります。仕事のこと、家族のこと、これからの夢。3時間、二人で喋り続ければ、都会で名刺交換を100回するより、よほど深く相手を知ることになる。

この時間の中で信頼関係が育って、後日、何かしらの仕事に繋がる。そういうことが、実際に起きています。前回、「アテンドした方が後日お客様になった」と書きましたが、その多くは、この車の中の3時間から始まっています。

でも、仕事目的では、まったくない

ここは正直に書いておきたいのですが、僕は仕事に繋げるためにアテンドをしているわけではありません。

もちろん、結果的に仕事になれば嬉しい。でも、動機はそこではないんです。感覚としては、いろんな方と、何度も何度も八重山旅行をしている。ただ、それが楽しい。楽しくてやっていたら、たまたま信頼が生まれて、たまたま仕事にもなる。順番は完全にこっちです。下心があってやっているわけではない、というのは、はっきり言えます。

たぶん、下心があったらうまくいかない。心から楽しんでいるから、相手も心を開いてくれる。この順番は、逆にはできないのだと思います。

「士業なのに」、竹富町観光協会に入りました

最近、竹富町観光協会に加入しました。会計士なのに、です。

経緯はシンプルで、商工会と観光協会の偉い方に勧めていただいたから。加入して具体的に何をするのかは、正直、まだ謎です(笑)。ただ、会員特典を活かして、竹富町のマスコット「ぴかりゃ〜」のグッズを作って販売する、みたいなことはやってみたいと思っています。

前に、竹富町商工会に入ったことで、たくさんのご縁が生まれた話を書きました。今回の観光協会も、それと同じで、また別のご縁のルートができるはずです。会計士としての本業と、この観光への関わりは、僕の中ではまったく別々のことではありません。どちらも、「沖縄の所得水準を上げる」という目的に向かう手段が、また一つ増えた——そう捉えています。

本業が回ってからなら、寄り道は絶対にやった方がいい

独立や移住を考えている士業の方に、「本業以外に手を出すこと」について、一つだけ。

本業が軌道に乗って、収支が問題ない状態になってからなら、本業以外のことには是非とも手を出すべきだと思います。

別の事業をやってみると、本業をやっているだけでは見えない、経営上の課題や悩みが分かるようになる。売る側、雇う側、リスクを取る側の気持ちが、身をもって分かる。それを自分で乗り越えた経験があると、お客様である経営者への提案が、また一段深くなる。アテンドも、グッズ販売も、僕にとっては「経営者の気持ちが分かる会計士」になるための、生きた勉強でもあるんです。

これは「僕の場合」です

いつもの留保を置きます。ここに書いたのは、島に移り、本業がある程度回るようになった上で、面白がって寄り道をしている、僕の場合の話です。本業がまだ不安定なうちに手を広げれば、ただの注意散漫になりかねない。順番は、間違えない方がいいと思います。

僕は「あなたもアテンドをやりなさい」と言いたいわけではありません。渡せるのは、僕がなぜ本業の外に出ていくのか、という一例だけです。あなたが本業の外に何を見つけるかは、あなた自身が決めることです。

次回は、少し目線を変えて、「離島の税務は、実は面白い」という話を書こうと思います。観光業や農業など、島ならではの税務の世界を、少しだけお見せします。