公認会計士・税理士・損害保険仲立人の長谷川賢哉です。島では「けんちゃん」と呼ばれています。

前回、僕の自由な働き方を書きました。今日はその「暮らし」の側、つまりお金の話です。石垣島に移住して、生活のコストは実際どう変わったのか。名古屋にいた頃と比べて、上がったもの・下がったものを、正直に実額で書きます。移住を考えている方が一番気になるところだと思うので、バラ色にも悲観にもせず、ありのままを。

「島は生活費が安い」は、半分は誤解でした

移住前、僕はどこかで「島暮らしは生活費が安い」と思っていました。実際に住んでみて、これは半分正しくて、半分は誤解だったと分かりました。

分かりやすいのが住居費です。石垣島の家賃は、決して安くありません。新築の賃貸物件だと、2LDKで月10万円〜というのが最近の相場感です。名古屋と比べて安いという感覚はなく、むしろ高いくらいかもしれません。リゾート地としての人気もあって、島の住宅需要はなかなかのものです。「南の島だから家賃が安い」というイメージで来ると、ここは肩透かしを食うと思います。

内地から来るものは高く、島で採れるものは安い

日々の食費や日用品は、はっきりした傾向があります。内地から運ばれてくるものは高く、島で採れるものは安い。これに尽きます。

輸送コストが乗る分、本土から届く食品や日用品は、名古屋にいた頃より高い印象です。象徴的なのが、もやし。あの、本土ではどこまでも安い庶民の味方のもやしが、島では立派な高級品です。輸送に弱い野菜ほど高くなる。

逆に、島で収穫される農産物や、地元で獲れる海産物は安いです。新鮮なものが、驚くほどの値段で手に入る。だから食生活は、「島のものを食べる」ようにすると、むしろ豊かで安上がりになります。内地の食習慣をそのまま持ち込むと高くつき、島の食に寄せると安くなる。ここは暮らし方で変わる部分です。

通販は「届くけれど、時間がかかる」

離島の通販事情も、移住前には想像していなかった点です。

Amazonはプライム会員なので送料自体は無料ですが、届くまでに1週間はかかります。「明日届く」の感覚は、ここにはありません。急ぎのものは、島で手に入るなら島で買う。通販は「時間に余裕をもって頼むもの」という感覚に切り替わりました。

もう1つ、地味に効くのがふるさと納税です。返礼品が「離島は発送対象外」となっている自治体が、けっこう多い。制度は使えても、選べる返礼品が本土より狭まる。これは住んでみて初めて気づいたことでした。

ガソリンは、内地より30円高い

車の話もしておきます。石垣島は車社会なので、ガソリン代は生活に直結します。そして、島のガソリン価格は内地よりだいたい30円ほど高い。これも輸送コストです。

移動が車前提の暮らしなので、この差は毎月じわじわ効いてきます。島で暮らすと決めたら、こういう「本土より少し高い」が積み重なることは、頭に入れておいた方がいいと思います。

島にニトリがあっても、離島手数料は10%

「島は物流が不便」と言われますが、実は石垣島には、日本最南端のニトリがあります。大きな家具や日用品が島で買える。これはとてもありがたいことです。

ただ、面白いのがここからで。島の実店舗で買っても、離島手数料が商品代金の10%かかります。目の前の店で、手に取って買っているのに、です。島まで商品を運んでくるコストが、ちゃんと価格に乗っている。裏を返せば、離島で「本土と同じ品揃えの店がある」こと自体が、この手数料に支えられているとも言えます。

本土なら気にせず買えるものが、島では「これ、離島手数料が乗るな」と一呼吸置くようになる。こういう小さな上乗せの積み重ねが、島の暮らしのコストなのだと思います。

一番大きいのは、飛行機代。年300万円

そして、僕の場合に限っては、暮らしのコストで飛び抜けて大きい項目があります。飛行機代です。年間で、300万円くらい使っていると思います。

ただ、これは誤解のないように書いておきたいのですが、島に住むと必ずこれだけかかる、という話ではありません。前回書いたとおり、僕はあえて「呼ばれたら行く」という動き方を自分で選んでいて、その結果として飛行機にほぼ毎週乗っている。2026年は7月までで60回搭乗しました。この300万円は、移住の必須コストというより、僕がそういう働き方・生き方を選んだことの費用です。

もし内地との行き来を最小限にすれば、この額はぐっと下がります。逆に僕は、この移動こそが仕事にも人生にも効いていると思っているので、進んで払っている。ここは人によって、まったく違う数字になる項目です。

それで、可処分所得は増えたのか

さんざん「あれも高い、これも高い」と書いてきました。では結局、自由に使えるお金は、名古屋時代と比べて増えたのか、減ったのか。

結論から言うと、増えました。

二拠点のような生活になって、経費はかなり増えています。飛行機代をはじめ、島暮らし特有の出費も乗っている。それでも、トータルで差引きすれば、可処分所得は名古屋にいた頃より増えたというのが、正直な実感です。支出が増えた以上に、島に移ってからの仕事が育った、ということだと思います。

だから「移住すると生活が楽になる」とも「移住すると金銭的に苦しくなる」とも、単純には言えません。支出は確かに増える項目が多い。でも、それを上回る形で収入の側が動くかどうかで、差引きは変わる。僕の場合は、幸いにも増えた側でした。

お金では測れないものの話

最後に、数字では測れない話も少しだけ。

可処分所得が増えたこと以上に、暮らしの満足度がとても高い。これが移住して一番よかったことです。毎日、美しい海を見て生活できる。人と人との繋がりが近い。今まで知らなかった文化や価値観に触れられる。これらは家計簿には一円も出てこないけれど、僕にとっては何よりの「豊かさ」です。

お金の話をさんざんしておいてなんですが、移住の損得は、最後はお金だけでは測りきれない。増えた出費も、この満足度の前では、必要な投資だったと思えています。

これは「僕の場合」です

いつもの留保を置きます。ここに書いた数字と実感は、石垣島に移り、二拠点的な働き方を選んだ、僕の場合のものです。住む島、暮らし方、家族構成が違えば、お金の動きはまるで変わるはずです。特に飛行機代のような項目は、僕の選択によるところが大きく、そのまま参考にはならないと思います。

答えを渡すつもりはありません。渡せるのは、うちの家計のリアルな実感だけです。あなたが移住したら暮らしのお金がどう動くかは、この数字を材料に、ご自身で見積もってみてください。

次回は、「離島で開業して、やってしまった失敗」を正直に書こうと思います。うまくいった話ばかりでは、フェアではないので。