公認会計士・税理士・損害保険仲立人の長谷川賢哉です。島では「けんちゃん」と呼ばれています。
僕は自分のことを「日本一自由な士業」と名乗っています。そう言うと「実際どんな働き方なの?」と聞かれます。今日はそれに答えます。ただ、先に白状すると、きれいな1週間の時間割は出てきません。なぜなら、僕の働き方には、決まった時間割がないからです。それこそが、今日書きたいことです。
まず、僕にとっての「自由」を定義します
働き方の話に入る前に、僕が言う「自由」が何なのかを決めておきます。3つあります。
1つ、いつ何をやるかを自分で決められること。2つ、仕事と遊びの境界がないこと。3つ、場所に縛られないこと。この3つが揃っている状態を、僕は自由と呼んでいます。収入が多いとか、暇だとか、そういう話ではありません。以下に書く働き方は、この3つがどう実現されているかの実例だと思って読んでください。
朝は9時前に事務所。でも、そこから先は決まっていない
始まりだけは、わりと規則的です。事務所の営業時間は10時から17時ですが、僕は9時前には事務所にいます。
決まっているのは、そこまでです。そこから後の1日は、その日によってまったく違います。
というのも、島ではアポイントが読めないからです。当日に急に打ち合わせが入ることもあれば、アポなしでふらっとご来所される方もいる。「近くまで来たから」と、予約もなく事務所を訪ねてくる。都市部の士業からすると驚かれるかもしれませんが、これが日常です。だから僕は、1日をきっちり設計することを、そもそも諦めています。むしろ、その余白を空けておくことが、この島で仕事をするコツだと思っています。
島の人とは「3アポまで」、リモートは1時間刻み
僕の1日には、実は2種類の時間が流れています。
1つは、島の方との対面の打ち合わせ。これは、午前・午後・夜で1日3アポまでにしています。理由は、八重山の方々は「ゆんたく」、つまりおしゃべりが好きで、1件あたりの時間がとにかく長いからです。名古屋で開業していた頃は1時間刻みでアポを入れていましたが、島ではそれをやめました。区切ろうとすること自体が、この島には合っていなかった。その長い時間の中で、信頼が育つのだと今は思っています。
もう1つは、全国・海外のお客様との打ち合わせ。島にいるときは、これをオンラインで、予定が空いているタイミングに1時間刻みで入れていきます。時間は相手の都合に合わせます。全国・海外の仕事のうち、8割ほどはこのオンライン、残りは出張しての対面、という感覚です。オンライン打ち合わせは、石垣から本土へ向かう途中、那覇空港での乗り継ぎの合間に入れることもあります。その待ち時間が、ちょうどいい打ち合わせ枠になる。
ゆっくり流れる島の時間と、1時間刻みのリモートの時間。この2つが、同じ1日の中に同居しています。
移住したのに、飛行機にはほぼ毎週乗っています
「場所に縛られない」と言うと、島にこもって全部リモートで完結しているように聞こえるかもしれません。ところが、実際はその逆です。
移住するとき、僕は「1か月のうち3週間くらいが島で、残り1週間が内地」——主に名古屋、たまに東京や大阪、そんなイメージを描いていました。ところが蓋を開けてみると、内地への出張が思いのほか多い。飛行機には、ほぼ毎週乗っています。どれくらいかというと、2026年は7月までで、すでに60回搭乗しました。
我ながら「移住したのに、なぜこんなに飛んでいるんだ」と笑ってしまいます。でも、これも「場所に縛られない」の一つの形なのだと思っています。島にいることも、内地に飛ぶことも、どちらも自分で選べる。石垣を拠点にしながら、必要ならどこへでも行く。移住は「島に閉じこもること」ではなかった、というのが正直な実感です。ちなみに、飛行機の移動中もWi-Fiが繋がるので、たいていPC作業をしています。空の上が、案外いい仕事場だったりします。
土日祝も、平日と同じように働きます
曜日の感覚も、あまりありません。平日と土日祝で、仕事の種類に大きな違いはなく、予定は曜日に関係なく入れています。
ただ1つ傾向があるとすれば、土日祝はアポが入りにくいので、その分、事務作業に充てることが多い。世間が休んでいる時間は、静かに手を動かすのに向いています。逆に、その平日にぽっかり空いた時間を、遊びに使えばいい。曜日でオンオフを決めないから、かえって時間を自由に配れる、という感覚です。
海は晴れそうな日に。飲みは、時に15時から
遊びの話もします。海に出るのは、「明日は天気が良さそうだから行こうかな」という感覚で決めます。平日か週末かは関係ありません。そして、海に行く日は仕事をしません。これが、1つ目の自由「いつ何をやるかを自分で決められる」の、一番わかりやすい形です。
飲みの場は、会合やアテンドも含めて、週に4日くらい。前回「誘われたら可能な限り行く」と書きましたが、実際これくらいの頻度です。誘われれば、15時くらいから飲み始めることもあります。営業時間の途中ですが、そこは自分で決められる。もちろん、夜のオンライン会議はできれば避けたい。理由は単純で、飲みに行けなくなるからです。冗談のようですが、僕にとっては大事な優先順位です。
自由に見えて、縛られてもいます
ここまで読むと、ずいぶん気ままに見えるかもしれません。でも、正直に書くと約束したので、縛られている部分も書きます。
繁忙期は、当然ながら別です。期限内に仕上げなければならない仕事は待ってくれないので、その時期は事務所に引きこもります。海にも行きません。自由とは「いつでも遊べる」ことではなく、「やるべき時にやり切れば、あとは選べる」ということです。締切から自由なわけでは、まったくありません。
むしろ、選べる幅を持つために、やるべき時にはきっちり引きこもる。この濃淡があるからこそ、海に行く日を自分で決められる。自由と規律は、僕の中では反対のものではありません。
居酒屋のとなりの席から、仕事が始まることもある
3つ目の自由「仕事と遊びの境界がない」を、具体例で2つ。
1つは、島の居酒屋でひとり飲みをしていたときのこと。たまたま隣に座った方と話が弾んで仲良くなり、その方がそのままお客様になった、ということがありました。一人で飲みに行っただけなのに、気づけば仕事に繋がっている。
もう1つは、島に来られた方をアテンドして、後日そのままお客様になったケース。これも数件あります。観光の案内をしていたつもりが、いつの間にか仕事の相談になっている。遊びのつもりの時間が、仕事に変わる。逆に、仕事のはずの飲みの席が、ただ楽しい夜になることもあります。
この境界のなさを、僕は「けじめがない」とは思っていません。仕事と遊びを分けないほうが、島では自然だし、結果として仕事も増える。オンとオフを厳密に分ける働き方とは、たぶん真逆です。でも、このほうが僕には合っているし、離島という場所にも合っている気がします。
これは「僕の場合」です
いつもの留保を置きます。ここに書いた働き方は、竹富町でただ一人の会計士として、リモートと出張を組み合わせて仕事を回している、僕の場合です。同じ士業でも、扱う業務や顧客層が違えば、まるで違う1日になるはずです。アポなしの来客に対応できるのも、1日3アポで回るのも、供給の空いた場所にいるからこそ、という面は否めません。
そのうえで、独立して自由に働きたいと考えている方へ。自由とは、サボることでも、暇なことでもありません。やるべき時にやり切って、あとの時間を自分で選ぶこと。仕事と遊びを無理に分けないこと。そして、どこにいてもいいと決めること。少なくとも僕にとっての自由は、この3つでできています。
答えを渡すつもりはありません。あなたにとっての自由な働き方が何なのかは、あなた自身が決めることです。この話は、その材料の1つにしてください。