公認会計士・税理士・損害保険仲立人の長谷川賢哉です。島では「けんちゃん」と呼ばれています。
2024年1月に名古屋から石垣島に移住して、2年8ヶ月が経ちました。
「何を準備すればいいですか」と聞かれることが増えました。ただ、僕自身の準備は穴だらけでした。
移住3ヶ月前の自分に会えるとしたら、何を伝えるか。そういう書き方をしてみます。うまくいった話はほとんど出てきません。
引っ越しが楽だったのは、二拠点にしたからです
部屋を借りると決めたのが2023年7月。実際に移住したのが2024年1月です。
引っ越しは拍子抜けするほど簡単でした。部屋が家具付きで、名古屋の家もそのまま残す二拠点にしたからです。やったことは、洋服を段ボールに詰めて宅急便で送っただけ。冷蔵庫も洗濯機もベッドも運んでいません。
ただ、二拠点だから楽だっただけです。
事務所の引っ越しでは、名古屋から石垣島までトラックを1台出しました。値切って50万円。島に物を運ぶというのは、そういう金額がかかることなんだなぁと思いました。
「9月かな」と言われて9月に行ったら、スケルトンでした
住まいは、不動産屋を一軒も回っていません。
2023年7月に、島でお世話になっている大家さんから声をかけていただきました。フルリノベーション中の物件があるから、完成したら貸すよ、と。
完成時期を聞くと「9月かな」。
9月に見に行ったら、スケルトンでした。壁も床もありません。
「10月かな」と言われて10月に行くと、まだ。11月も同じ。12月になっても完成しませんでした。移住日が決まっているので相談したところ、「なんとかするよ」と。
年が明けて1月、僕が入る部屋だけ先に仕上げてくれていました。ほかの部屋はまだ工事中です。
大家さんに悪気はまったくありません。これが島の時間です。
事務所は、移住前から探しておくべきでした
ここが最大の反省点です。
石垣島は、事務所に使える物件がほとんど市場に出てきません。だから僕は、どうせ出てこないんだから移住してから探せばいい、と考えました。
移住を決めてから移住するまでの半年、僕は何度も島に通っています。その時間で物件探しを動かしておけばよかった。
結果、こうなりました。
- 2024年2月:紹介された不動産屋から、表に出る前の情報をもらう
- 2024年3月:賃貸契約。内装業者が内寸を測定。1ヶ月で終わると思っていた
- 2024年4月:見積もりが出ない。設計士から図面が上がらないとのこと
- 2024年5月:進展なし。忙しくて手が回っていないとのこと
- 2024年6月:紹介してくれた島の方が激怒し、別の業者へ引き継ぎ
- 2024年7月末:新しい業者はレスポンスが早く、すぐ着工
- 2024年8月:内地のお盆と沖縄の旧盆で工事が止まる
- 2024年9月末:内装完成。電話とネットの引き込み工事を依頼
- 2024年10月:ネット工事は日程が決まるまでに2週間、工事日はさらに1ヶ月先
- 2024年11月中旬:ようやく事務所の機能が揃い、営業開始
移住から10ヶ月かかりました。
最初の内装業者さんとは、今ではすっかり仲の良い飲み仲間です。悪い人ではまったくありません。島の仕事の進み方と、僕の内地の感覚が噛み合わなかっただけです。
そのうち連絡が来るだろうと待っていたのは僕のほうです。こまめに確認しに行けばよかった。
車の重要性を、僕は完全に見誤っていました
名古屋では地下鉄とバスで生活が完結していたので、車を持ったことがありませんでした。島でもなんとかなるだろうと思っていました。
移住してしばらくは、バスとタクシーと自転車で生活しています。
その自転車は、近所の中学生から借りたものです。移住してきたばかりの大人が、中学生に自転車を借りて島を走り回っていました。島の人の優しさには、最初から助けられていました。
車を買ったのは2024年3月。人生で初めてのマイカーです。
決め手はバスでした。近所のバス停は30分に1本。しかも空港発の路線なので、来た時点で観光のお客さんで満員のことがあります。運転手さんに「満員なので乗れません。次のバスに乗ってください」と言われる。次は30分後です。
車は、島では生活インフラでした。
一番大事な準備は、移住前の「通い」でした
移住した時点で、クライアントが10社ありました。運ではありません。移住前から島に通い続けた結果です。
島の人と飲んで騒ぐだけなら、初対面でもできます。ただ、仕事を頼んでもらえるところまでの信頼は、接点の数がないと積み上がりません。
島の方の中には、内地の人間に仕事を依頼することへの抵抗を持っている方が少なからずいます。都合が悪くなったら内地に帰るんでしょう、という感覚です。僕はこれを当然だと思っています。だから通い続けることに意味があります。
移住してから営業するのではなく、移住前から通って関係をつくる。年単位で考えたほうがいい気がします。
業務の体制については、特別な準備をしていません。名古屋で独立してからのお客様はもともとクラウド会計中心で、訪問しない方針でやっていました。そのまま持ってこられました。
撤退のコストも、計算しておく
移住が100%うまくいくとは限りません。撤退するコストと、戻って再出発するコストも計算しておくべきだと思います。
退路を断つのが美徳だとは、僕は思っていません。撤退できる余力があるから思い切って挑戦できます。会計士としての意見でもあります。
そして、いちばん大事なこと
vol.001で「奥さんにはきちんと順を追って説明してください」と書きました。その回収です。
詳しくは書けません。ただ、なぜ移住したいのか、移住して何を実現したいのか。その共有が必要でした。
移住3ヶ月前の自分にアドバイスを一つだけ渡せるとしたら、僕は「奥さんにちゃんと説明してください」と言います。
工期の遅れも、車も、顧客の助走も、準備すればなんとかなります。家族との想いの共有だけは、後からやり直すのが一番難しいです。
これは「僕の場合」です
ここまで書いたのは、家具付きの部屋が借りられて、名古屋の家も残せて、移住前から通って顧客がいた、という条件が揃ったケースです。
単身で来るのか家族と来るのか。資格があるのかないのか。島に伝手があるのかないのか。それによって必要な準備は変わります。僕が渡せるのは、実際に踏んだ手順と、実際にかかった時間だけです。
準備が足りなかった分は、島の人に助けられて埋めてもらいました。今度は僕が誰かの準備を減らせるように、実際にかかった時間を書き続けていきます。