公認会計士・税理士・損害保険仲立人の長谷川賢哉です。島では「けんちゃん」と呼ばれています。2024年1月、名古屋から石垣島に移住して事務所を構えました。

よく「思い切った決断ですね」と言われますが、実際は10年かけて、島に引き寄せられるように決まっていった話です。今日はその経緯と、開業初年度の数字を書きます。

きっかけは、ノリで配った名刺だった

人生で初めて沖縄に来たのは2014年9月。行き先は本島ではなく、八重山の小浜島でした。あの海に完全に魅了されて、それから何度もプライベートで通うようになります。

転機は2019年1月に名古屋で独立開業した後です。プライベートの旅行で来島したのに、ノリで島の方々に名刺を配っていました。営業計画も何もありません。ただの旅行者の名刺配りです。

ところが後日、本当に電話がかかってきたんです。「税理士を探している」と。そのお客様からさらに紹介が増えていきました。

なぜ名古屋の会計士に、島から依頼が来るのか

不思議でした。八重山には税理士がいないのか? 調べて分かったのは、当時八重山の税理士は9名しかおらず、その大半がご高齢で、後継ぎもいないという現実です。

島の若い方が開業して税理士に依頼しようとしても、「もう新規は受けられない」と断られてしまう。それで人づてに、名古屋にいる僕のところまで紹介が流れてきていたのです。

このとき気づいたことが2つあります。数年以内に、島の税理士事務所(個人事業)の事業承継が確実に発生すること。そしてその時、その先生方が抱えているクライアントが行き場を失うことです。

その受け皿として「日本最南端の税理士法人」を作れないか——そう考え始めたのが2022年頃でした。そこからは、名古屋から毎月5日ほど、ワーケーションで八重山に通う生活になります。

移住を決めた直接の理由は、ホテル代だった

きれいな話だけではありません。移住の最後のひと押しは、経済合理性でした。

コロナ禍の石垣島は、ホテルが1泊5,000円ほどで泊まれました。ところが終息後は1泊1万円を超えてきます。毎月5日滞在すると、ホテル代だけで1回7万円。年間にすると80万円を超える計算です。

「これはもう、部屋を借りた方が安いのでは?」

お世話になっている島の方にそう相談したところ、そこからは「島が僕を呼んでいる」としか思えないような出来事や出会いが立て続けに起きました。結果、2024年1月に移住が決まります。

開業初年度の数字を書きます

移住時点で、クライアントは既に八重山で10社ほどありました。規模感としては1社あたり年間50万円ほどです。つまり、売上ゼロからのスタートではなく、島に通っていた数年間が助走になっていました。

一方で、事務所の立ち上げには想定外の出費と時間がかかりました。

  • 家賃:月16.5万円(税込・事務所裏の倉庫21坪込み)
  • 入居時の初期費用:総額約83万円(敷金30万円、仲介手数料16.5万円、家賃保証8.3万円、火災保険2.4万円、入居月の日割り賃料など。ちなみに礼金はゼロでした)
  • 事務所の内装工事:約170万円

数字より痛かったのは時間です。内装工事が全く進まず、2024年3月に賃貸契約をしたのに、事務所としての体裁が整ったのは同年11月。開設準備に、ほぼ1年かかりました。離島では工事の人手も資材も内地の感覚では動きません。これは移住前の僕が完全に見誤っていた点です。

これは「僕の場合」です

最後に留保を。ここに書いたのは、石垣島・公認会計士・移住前から顧客がいた、という条件が揃った僕のケースです。あなたの資格、あなたの島では、前提がまるで違うはずです。

僕は答えを渡すつもりはありません。渡せるのは一次情報だけです。この数字と経緯を材料に、ご自身の場合はどうか、考えてみてください。

ひとつだけ、あの頃の自分に言うとしたら——移住は素晴らしい決断だった。ただし、奥さんにはきちんと順を追って説明してください。

次回は、多くの方に聞かれる「離島の顧問料はいくらか。価格をどう決めたか」を書きます。